朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一第60回2017/3/3

 長崎駅名物と言われます教会風の三角屋根を冷たい雨が叩いております。駅舎の白壁を飾る贅沢なステンドグラスも、今日は日の光を失って悲しげであります。(51回)
 
 列車のなかでは、ガラス窓に顔をつけました喜久雄が、遠ざかっていくマツや組員たちに最後の最後まで手を振っております。(52回)


 喜久雄が、長崎を出るときのことが描かれていた。この感傷的な気分もすぐに白けてしまうが、晴れやかなものでなかったのが伝わってくる。
 今回は、大阪に着いたときが描かれている。

 眩しいほどのホームにゆっくりと列車が滑り込むなか、喜久雄と徳次は互いの旅行鞄を肩に担ぎます。(60回)

 二人の到着を祝うように、底冷えのホームに汽笛が響きます。(60回)

 
長崎を出るときと、大阪に着いたときの対比がおもしろい。