朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一第61回2017/3/4

 喜久雄にも徳次にも、不安感はなさそうだ。不安よりも物珍しさの方が勝っている。特に大都会は初めての徳次は、自分がいつ捕まるかもしれないという警戒心はどこかへ行ってしまったようだ。
 
 大きな看板の企業名を見ると、産業と企業の栄枯盛衰を感じる。当時は発展の象徴だった鉄道が、地方では次々に廃線になっていっている。