朝日新聞夕刊連載小説・津村記久子作・『ディス・イズ・ザ・ディ 最終節に向かう22人』第10回2017/3/10
第2話 若松家ダービー⑤

あらすじ
 琵琶湖と泉大津が対戦する最終節、圭太は琵琶湖のホームスタジアムで試合前のグッズ売り場と屋台村で買い物をしたり、食べたりしている。そうしながら、泉大津のマスコットを見ると、懐かしいような気がした。
 圭太の両親は、圭太とは別に琵琶湖のホームスタジアムに来ていた。今日は、圭太の妹の真貴も一緒に来るとは言わなかったので、二人(供子と仁志)だけの応援だった。仁志は、圭太のことを気にする様子もなく、久し振りのアウェイを楽しんでいる。供子は、相手チームの応援をする圭太と、家で留守番をしている真貴のことが心配になってきた。

感想
 子どもの成長に伴う家族の変化がうまく書かれている。
 圭太は、家族みんなで応援していたチームと自分が応援し始めたチームを比べることで、自分の成長や、将来を考えている。
 供子は、夫婦二人でサッカー観戦に来ていることから、家族の将来を考えている。夫婦二人で来たことを、「自分は意外と悲しまなかったな」としている。
 さらに、「このまましばらく夫婦二人での観戦が続き、その後もしかしたら夫もスタジアムに行くのをやめてしまうのかも、と思うと、それはやっぱり寂しいと思ったので、仁志のことは今まで通り大事にしようと決めた。」と考えている。この辺りが、今の夫婦関係を表していて、すごくおもしろい。
 現代の日本の家族では、子は、独立すれば親と一緒に暮らさない。夫婦は、最終的には二人だけになる。二人だけになった夫婦も一緒にいる必要性がなくなれば、離婚を阻むものはない。そんな世の中が映し出されている。
 そういう現代の家族の在り方を、今のままでよいとは思えない。だが、親子が一緒に暮らす過去の家族に戻るべきだとは断じて思わない。それよりは、血のつながりを基盤にする家族から、もっと別のものでつながる家族へと、変化できないか、と思う。