朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一第70回2017/3/13

 立花の家は、その稼業からしても世間の家とは全くの別物であろうことは想像に難くない。
 それに、負けず劣らず花井の家も一般の家とは桁外れの違いだ。だいたい、徳次が喜んで食っているご飯は、遅い朝飯なのか昼飯なのか。俊介がすすっていた肉うどんは、普通なら昼飯のような気がするが、そうでもなさそうだ。それに、俊介はお稽古には行くが、学校に行く気配はない。家の中には、半二郎の家族以外に、番頭の源吉と女中頭のお勢がいて、他にも若い女中や男衆がいる。役者の弟子もいるのであろうか。
 幸子は、よく喋り、喜久雄をスッと受け入れている。しかし、「坊ちゃん2号」が極道の坊ちゃんということは知らないだろうに。