朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一第73回2017/3/16

 今回は、ほとんどが会話と語りで構成されている。まるで、ラジオドラマの脚本のようだ。

 喜久雄、俊介、徳次、それぞれに思っていることは違う。それぞれに今までの生い立ちが違う。そして、三人共に温かい普通の家庭とは無縁な環境で育ってきた。
 人気役者の親を持ったからには仕方がないのだろうが、俊介はどんな気持ちで義太夫の稽古に通っているのだろうか。喜久雄は芝居好きというだけで、この鶴太夫の話に感心しているようだが、「あんたらもちょっとやってみ」とでも言われたら、どうするつもりなのだろうか。