朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一第76回2017/3/19

 春江は、いったいどんな少女(少女と呼んでいいのか迷うが、今回の文章の中は少女とある)なのか?春江だけでなく、喜久雄もその姿格好をイメージできない。今までの文章からは、二人の行動は浮かんでくるが、顔つきや性格を思い浮かべる要素が少ない。春江は、なぜ体を売っているのか?春江と喜久雄はどうやって出会ったのか?
①春江と喜久雄は、一緒に刺青を入れる約束をしていた。(20回)
②徳次は、喜久雄に、「(略)まだ、春江ば、公園に立たせとるとね?」と言っていた。それに対して喜久雄は、「立たせとるけど、毎晩、俺(おい)が見張っとるけん、ヘンな客が寄ってきても俺が追い払うし」と答えていた。(20回)
③春江には、母がいて、小さいながらスナックをやっている。
④刺青の場面では、喜久雄が春江のことを、「だって、あれは鈍感な女やもん」と言っていた。(41回)
 喜久雄も春江も、容姿や性格が描かれないのが、この作品の特徴だ。その意味で、挿絵は作者の意図に適している。

 これまでのストーリーからは、私には次のような予想しか湧いてこない。

 喜久雄は、組の年上の者から童貞であることをからかわれ、徳次に相談した。徳次は、手っ取り早いのは、買うことだと教え、公園に行けば若い娘を買えると言った。そこで、喜久雄は深夜公園に出かけ、春江に会った。喜久雄は、一度会っただけで、春江を好きになり、春江も同様だった。喜久雄は、さすがに、売春をしている少女を好きになったとは親には言えず、春江に大金をやることはできなかった。
 春江の母には、多額の借金があり、金がどうしても必要だった。春江と喜久雄は、出会いこそ特殊であったが、互いに好きになり、離れられなくなったのは十五の少年と少女の純粋な気持ちだった。

 いずれ、明かされるであろう二人の出会いと恋はどんなものであろうか。