朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一第77回2017/3/20

「高校に通いながら役者の稽古」
 すごくいい境遇にいる。こんなにスムーズに大阪での喜久雄の生活が始まっているなんて、予想外だ。
 半二郎は、やはり喜久雄のことに、責任を感じていたのであろう。いや、それよりも喜久雄の役者としての才能と、喜久雄をそばに置くことが自分の息子のためになると見抜いているのだと思う。
 徳次は、こういう場面ではカッコいい。このカッコのよさと、分かりやすさが人を引き付ける。
 ヤクザ映画は、仁侠の男女が主人公だ。いろいろと理由付けしても、弱きをたすけ強きをくじく気性の爽快さは、人間感情の根っこに元々ある。ヤクザ映画が生き続けるのもこの辺に理由があるのだろう。