朝日新聞夕刊連載小説・津村記久子作・内巻敦子画『ディス・イズ・ザ・ディ 最終節に向かう22人』第11回2017/3/17  第2話 若松家ダービー⑥(第2話了)
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あらすじ

 長男の圭太と、両親の供子、仁志は、それぞれ別に琵琶湖トルメンタスのホームグラウンドに着いた。今日は、琵琶湖対泉大津が対戦する最終節だ。
 試合前半は琵琶湖が押し気味で、0-0に終わった。仁志は、琵琶湖の選手の良いプレーに感嘆のつぶやきを漏らすようになった。供子も、仁志の「琵琶湖いいチーム」という言葉に同意する。圭太が琵琶湖にひきつけられたのも無理がないと思った。でも、琵琶湖を応援できそうかというと、そうは思わなかった。
 後半、泉大津が得点するが、すぐに反撃され、1-1となった。試合終了間際に琵琶湖が、1点入れた。が、アディショナルタイムで、泉大津のフナがヘディングを決め、結果は引き分けに終わった。
 スタジアムを出てシャトルバス乗り場へ向かうときに、供子は圭太を見つけた。手を振ろうとしてやめた。圭太の佇まいは、とてもしっかりして見えた。

感想
 日本の今の家族の特徴は、バックボーンとなるようなものがないところにあると思う。家族は、その一人一人の成長と老化に応じて変化していくしかない。住居を取り上げても、一世代前のように一軒の家に家族全員が生活するということは少なくなっている。
 そう考えるなら、家族内の関係が固定化せずに変化し続けるようでないと、家庭は崩れると思う。つまり、昔のように、親はいつまでも親であり、子は成長しても親に従うでは今の親子関係はもたない。また、母の役目、父の役目が固定化していては、子育てに対応できない。さらに、夫婦関係も相互の老化に伴って変化しなければならない。
 この小説は、身近な家庭に感じられる若松家を取り上げ、その変化を具体的に描き出した。しかも、今の家庭の成功例と思う。サッカークラブの応援を題材にさりげなく書いているが、内容は今の家庭、家族を考えるヒントがいっぱい入っていると感じた。
※感想その2へ続く。