朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一第78回2017/3/21
 
 徳次が鑑別所から逃げて来て、春江の母の店にいた喜久雄を訪ねて来たときも、春江は、徳次に優しい言葉をかけていた。
「徳ちゃんって、上においでよ。年越しそば温めてやるけん」(34回)
 
今回では、弁天の面倒まで見ている。
気にかけてやる義理はないのですが、情け深いと言いましょうか、おせっかいと言いましょうか、結局、同じようにその鼻血をハンカチで拭きとってやる春江でございます。(78回)
 
 
春江は、情け深い、気立てのよい娘だと感じる。外見も、いかにも地方から出て来た娘という姿格好のようだ。

 前回の感想では、喜久雄は高校へ行かせてもらい、歌舞伎役者になるための稽古をさせてもらっていると思った。でも、それは春江の言葉でしかない。喜久雄は、本当に高校へ行っているのか?また、俊介と同じような扱いで稽古をさせてもらっているのか?心配になってきた。