朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第81回2017/3/24

 稽古に励む喜久雄の気持ちについて、次のように感じる。

 女将の幸子も、息子の俊介も今まで見たことのないような人です。幸子はきれいでよくしゃべります。俊介は、こんな男がいるのかと思うほど色白です。
 また、義太夫や踊りの稽古は、長崎のものとは比べものにならないほど厳しいものです。なぜか、その稽古を辛いとは感じません。それどころか、義太夫や踊りの面白さを感じるようになりました。
 なかでも、花井半二郎の稽古は一番厳しいのですが、これも辛くはありません。それよりは、真剣に教えてくれる半二郎の期待になんとかこたえないと思うのです。