朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第82回2017/3/25

 徳次の気持ちについて、次のように感じる。

 立花組での暮らしはおもしろかったが、花井の家での暮らしはもっとおもしろいと思っています。
 番頭の源吉さんや女中頭のお勢さんは、徳次をかわいがってくれます。俊介こそ、最初は喧嘩腰でしたが、今はそんなことはありません。今は、俊介のことを喜久雄と同じように面倒を見なければならない坊ちゃんと思っています。
 肝心の喜久雄は、厳しい役者の稽古に打ち込んでいます。その喜久雄が会いたがっていた春江を、大阪に呼び寄せることもできました。
 なにより、ここは長崎よりもうまい物が食えることに満足しています。