朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第回2017/3/20

 お金は人を動かす。現実でも小説でも。この小説でもお金が描かれていくだろう。
 マツは、立花組のことも自分のことも全てを投げ打って、喜久雄のためにお金を作るに違いない。だが、その力も尽きかけている。喜久雄は、権五郎に稼ぎが少なかった頃は幼かった。物心がついてからは、金の面では甘やかされていた。父が殺されてからは辛い思いもしていたが、まだ金に困ることはなかった。大阪に来てから今までも、仕送りに何の心配もしていない。
 逆に、徳次と春江は金の苦労が身に染みていると思う。
 半二郎は、歌舞伎の名門役者で、映画スターだが、息子や喜久雄の金の管理を見ると、お金の価値を知っていると感じる。

(略)この数年後、一部の評論家たちから「芸品がある」と評される喜久雄の踊りに結びついたのでございます。
 
 ここからの数年間には、喜久雄を巡る人の間に、金の問題も出てきそうだ。