朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第89回2017/4/1

 金持ちと金持ちの若旦那ばかりを客にしている京都の芸妓なので、俊介は別としても喜久雄のことなぞ相手にしないと思っていた。逆だったようだ。市駒は、自分の年に近く、しかも自分の貧しい生まれのことを素直に話すことができる男として、喜久雄を見ている。二人が抜き差しならぬ仲になるのが目に見えるようだ。

 一斗缶の中の焚火とはいえ、深夜の火を見とがめられないのか?