第四章 大阪二段目
76~87回 
 舞台は、長崎から1965(昭和40)年の大阪へ移った。喜久雄と徳次が、大阪の歌舞伎役者花井半二郎の下で暮らすようになり、ほぼ一年が過ぎた。
 その大阪へ、喜久雄を追うように春江も出て来ていた。春江は、喜久雄と徳次が準備した安アパートに住み、大阪のスナックで働き始める。
 喜久雄は、半二郎の一人息子俊介と一緒に、厳しい役者の稽古に打ち込んでいる。喜久雄と俊介は、同じ高校に通い、すっかり仲良くなっている。
 半二郎は、俊介と喜久雄に女形としての才能を見出していた。そこで、喜久雄を「部屋子(へやご)」にしたいと、長崎の母マツへ手紙を出した。手紙を受け取り、喜久雄に会いに大阪に来たマツは、役者修行に打ち込んでいる息子を見て喜ぶ。しかし、マツが借金までして大阪へ仕送りをしていることは、喜久雄には話せなかった。
※「部屋子」になれば、歌舞伎役者の幹部俳優「名題(なだい)」と同等の扱いを受ける。

88~100回
 喜久雄と俊介は、半二郎の計らいで黒子として京都南座に呼ばれる。
 喜久雄は、京都で初めてのお座敷遊びをし、舞妓の市駒と会う。市駒は、お座敷がはねた後、初対面の喜久雄に、「喜久雄さんに芸妓人生を賭ける。人気役者になって、二号さんか三号さんを予約や。」と言う。
 喜久雄と俊介は、京都南座に出演していた名女形の小野川万菊の楽屋を訪れる。喜久雄は、万菊から「きれいなお顔だこと。でも、役者になるんだったら、その顔は邪魔。」と言われる。
 万菊の『隅田川』の演技に、喜久雄は、強烈な体験を受ける。
 徳次は、春江をきっかけに知り合った弁天とつるんで遊ぶようになっている。徳次の鑑別所脱走の件は、愛甲会の辻村が裏で動いたので、収容期間短縮になっていた。
 春江は、長崎からの出稼ぎの人をお客とするスナックで働き、その店を繁盛させている。
 徳次は、弁天がどこかから持ち込んできた儲け話に乗って、北海道へ行くと決め、喜久雄に別れを告げる。喜久雄は、誰かに騙されていると徳次を止めるが、徳次の決心は変わらない。
 
物語の年譜(第一章~第四章)
昭和39(1964)年
元旦。 喜久雄と徳次は、新年会の余興で「積恋雪関扉(つもるこいゆきのせきのと)」を踊る。その踊りを花井半二郎が観る。立花権五郎は、新年会に襲われ、裏切り者の辻村に拳銃で撃たれて三日後に死ぬ。
昭和40(1965)年 東京オリンピック開催
1月末。喜久雄は、学校に講話に来た宮地を襲うが、失敗する。
その後、喜久雄と徳次は、大阪の花井半二郎の家へ。更に、数か月後、春江が大阪へ。半二郎は、息子俊介と喜久雄に女形の才能を見出し、二人に厳しい稽古を付ける。
昭和41年(1966)年
喜久雄は、半二郎に連れられて京都へ。京都で、六代目小野川万菊の演目を観る。また、舞妓市駒と出会う。
徳次は、儲け話があるからと、喜久雄に別れを告げ、弁天と共に北海道へ行く。