朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第99回2017/4/12
 
 徳次が、弁天に言っていることと、喜久雄に言ったことが違う。
 徳次は、「春ちゃんに金送って、自分の店持たせたるわ。そしたら坊ちゃんも安心やろし」(98回)と言った。
 喜久雄には、「北海道で金作って、将来事業起こして成功した暁には、誰よりも立派な坊ちゃんのご贔屓さんになって(略)」と言い、春江のことには触れていない。

 弁天は、春江に惚れている。弁天から見て、徳次が春江に惚れているようには見えない。

「春ちゃんて、喜久雄いうやつの女なんやろ?なんで徳次が面倒看てんねん?」(98回)
 
 弁天には、徳次の春江への気持ちが不思議なのだろう。
 徳次と春江の関わりは、まだ語られていないことが多い。徳次は、本当に坊ちゃんの女だからというだけで、春江の身を案じているのか?それとも、徳次と春江の縁が、今後明かされるのか?