愛甲会の辻村は、まさにこの小説の狂言回しだ。
 喜久雄と半二郎の関わりの全てに辻村が顔を出している。徳次が喜久雄のお供として、大阪へ行くことになったのも、辻村の手配だ。さらに、徳次の鑑別所脱走の件をなかったことのようにしたのも辻村だ。
 その辻村が、俊介を絡めとってしまったようだ。この狂言回し役辻村は、花井親子にがっちりと食い込んでいる。 
 ということは、喜久雄が役者として成長していく過程へも、大きな力を出し続けることができるということだろう。 
 また、徳次が北海道で、成功しようが失敗しようが、辻村には逆らえないということだ。