朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第106回2017/4/19
 
 半二郎の心の内が分かるような気がする。
 できれば、辻村とはきっぱりと縁を切りたい。が、喜久雄のことを頼まれれば、断るわけにはいかなかった。自分の下に喜久雄を預かってみれば、その芸の才能もあって、なんとか一人前の役者にしてやりたいと思う。だが、喜久雄の陰には、辻村の存在が見え隠れする。その辻村が今度は、息子の俊介のことにも口を出すようになってきた。
 辻村の権五郎への裏切りを暴くことが正義なのだが、それは半二郎と半二郎の家族の破滅になりかねない。半二郎にとって、辻村はまさに避けたいのだが避けられない障害だ。そして、喜久雄は最も可愛い弟子であると同時に最大の悩みの種でもあるのだろう。


 東一郎と半弥、いかにもこれから人気が出そうな美しさのようだ。