朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第113回2017/4/26

 どんな仕事にも、他の人には知られていない陰の部分があるものだ。歌舞伎役者と聞けば、それなりに華やかな面を想像する。だが、限られた人数での地方巡業となれば、看板役者と言えども、裏方や興行担当と変わらぬ動きをしなければならないことが分かる。
 だから、半二郎も辻村などの地方の顔役のご機嫌取りもしなければならないのであろう。また、このように地方でも名前を売ることが、全国的な人気の土台にもなるのだろう。

 喜久雄が、帰省するとしたら、立花の家は大きく変わっていると思う。三年前も、母マツは金に困っていたはずだが、その時はそういう事情には気づかなかったようだ。久しぶりに帰る立花組と家の様子、そして、マツの暮らしぶりの変化を見せつけられるのではないか。