朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第115回2017/4/28

 前回(114回)の感想で、喜久雄が大阪の半二郎の家に行くことができたのは、尾崎と辻村のおかげと書いた。
 しかし、半二郎の家にいることになっても、喜久雄が義太夫や踊りに興味を持つことができなければ、その後の役者修行に喜久雄が精進することはなかった。
 喜久雄が、歌舞伎を面白いと思ったのは、本人の持って生まれた好みもあるが、何と言っても、マツの芝居好きが源となっている。
 さらに、半二郎が喜久雄の役者としての才能を見出したのは、マツがお膳立てした新年会の余興に他ならなかった。
 ということは、喜久雄の歌舞伎役者としての現在は、育ての母のマツがいたからと言える。
 そのマツは、全てを投げ打って、喜久雄に仕送りを続けていたのか。