朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第116回2017/4/29

 マツは、優しくて強い。
 マツが、喜久雄の生みの親千代子の生きているうちに、権五郎の妻同然になったのは、マツ自身が望んだことではない。それどころか、マツに責任はないのに、千代子に対して申し訳ないという気持ちを強く持ち続けていたと思う。
 一方、千代子の方は、女房の座を奪ったマツを恨む気持ちがあったと思う。だが、マツの世話を受けるうちにマツの本心が分かったのであろう。だから、喜久雄をヤクザにだけはしたくないという願いを、マツに伝えたのだと思う。感想 83回
 育ての子に、自分が持っていた物を、全て失っても仕送りを続けたマツ。役者修行の邪魔だけはしないようにと、取られた邸で女中をしているマツ。そこに、優しさと強さを感じる。