朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第132回2017/5/16

 喜久雄は、スターと言っても、歌舞伎の舞台上のこと。取材を受けるのも雑誌に載るものだし、後は写真がせいぜいのようだ。
 だが、時代はいよいよテレビ全盛に移っていく頃だと思う。
 そのテレビでの演芸だが、出演する方が慣れていなかったということをよく聞く。西洋師匠の泣き言も、まさにそういうことだろう。寄席では、考えられない時間短縮の要求なのだ。