朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第133回2017/5/17

 若いテレビディレクターの要求をはねつけて帰ってしまった師匠の代りに、弁天と徳次が番組の穴を埋め、しかもそれが、大受けする。そんな展開を予想したが、それほど甘いものではなかった。

 もしテレビの世界で認められれば、また人気者に返り咲けるかもしれません。師匠もそれは分かっているのでございます。そんな師匠が惨めにも太々(ふてぶて)しくも見え、泣くに泣けない喜久雄たちでございます。

 作者は、喜久雄たちに、テレビの力を見せつける場を設定した。
 スターというのも、なかなか苦労なものだとつくづく感じる。