朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第135回2017/5/19

 喜久雄だけでなく徳次も、どんなに半二郎のことを心配したかが描かれている。大阪に来るまでは、半二郎は二人にとって縁もゆかりもない人物だった。
 また、半二郎の方も、喜んで喜久雄と徳次を引き受けたわけではなかった。
 だが、この四年の間に芸の上での師匠というだけでない繋がりができあがったのだと思う。
 喜久雄は、出先で事故を知らされたので、半二郎の身を案じるだけで精一杯だった。その点、俊介と幸子は半二郎の命に別状がないことを知らされており、他の心配をする余裕があったらしい。