朝日新聞夕刊連載小説・津村記久子作・内巻敦子画『ディス・イズ・ザ・ディ 最終節に向かう22人』第20回2017/5/26  第4話 眼鏡の町の漂着④

あらすじ
 誠一は、解散したヴィオラ西部東京の最終試合のことが未だに忘れられない。それは、雨の中での負け試合だった。そのヴィオラの終わりは、誠一には永遠だった。
 ヴィオラが解散してからは、野上選手をずっと見てきている。その野上選手も、この最終節で引退する。
 そんな話を、携帯を見せてくれた隣の席の眼鏡の女性に誠一は話す。自分の話ばかりしたことに気づいた誠一は、その女性に、好きな選手がいるのか?それともチーム自体が好きなのか?とたずねる。
 その女性は、選手もチームも周辺もわりと好きだが、マスコットをすごく好きと答える。

感想
 
誠一は、過去の失われてしまったことに、ずっととらわれ続けている。過去の失われてしまったことというと、オーバーに聞こえる。だが、好きで応援していたチームの消滅を忘れられないで、そのチームに所属していた選手の移籍先をずうっと追い続けているのは、過去を追い求めていることになると思う。
 私は、誠一と同じ年頃には常に新しいものを追い求めてきた。昭和の雰囲気は、そういう傾向が強かった。無くなってしまったものを追い求める今の青年と、私と同年代の青年の違いをはっきりと感じる。

 消滅したチームを追い求めて、そのチームに所属していた選手の引退を見に来ている誠一。消えてしまった恋人を追い求めて、チームのマスコットを大好きという香里。この二人、なんとなく共通点がある。