朝日新聞夕刊連載小説・津村記久子作・内巻敦子画『ディス・イズ・ザ・ディ 最終節に向かう22人』第21回2017/6/2 第4話 眼鏡の町の漂着⑤

あらすじ
 マスコットのつつちゃんのいる屋台で、誠一が買い物のために並んでいるとバスの中で話した眼鏡の女性が現れる。誠一は、屋台の前でも、その女性と言葉を交わす。
 自分の席に戻った誠一が思うことは、これから始まる試合のことではない。十七歳の時に観たヴィオラの最終試合のことだった。ヴィオラの最終試合からの月日で、誠一は、大学に合格し、好きな人ができその人と別れ、就職をするなどいろいろなできごとを経験した。でも、誠一の半分は、いつもヴィオラの最終試合のスタジアムにいると考えている。
 香里は、偶然会った男性が好きだと言っていた野上選手に注目して試合を観ている。サッカーにくわしくない香里だが、野上選手が、とてもいい選手だとわかるようになった。

感想
 
第4話の二人の気持ちがわかるようで、まだわからない。
 サッカーの試合を観ることが好きで、好きなサッカークラブを応援するのが楽しい。それは香里も誠一もその通りなのだろう。だが、鯖江と倉敷に勝ってほしいとそれぞれが願っているかというと違うようだ。
 サッカーが好きで、スタジアムに通っているというよりは、それぞれが消えてしまったものを追い求めていることの方が強いと感じる。
 消えてしまったものに、とらわれ続けるのはわかる。でも、それがサッカーの応援という行動につながるのが、どうもよくわからない。