朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第160回2017/6/14

 前回に感じた以上に不思議で、そして、これこそが喜久雄の個性だといえることが今回に書かれている。
 育ての母のマツがいかに喜久雄へ愛情を注いできたかは、繰り返すまでもない。
 喜久雄が半二郎の代役を務めてからも、幸子はますます喜久雄の面倒を見ていた。しかも、俊介が出奔してからも、以前に変わらず喜久雄を助けている。幸子は、マツに次いで二人目の育ての母といえるほどだと思う。
 喜久雄が生みの母とは早くに別れたのに育ての母に恵まれたのは、マツと幸子という母性の豊かなしっかり者の女性と出会えたからである。それと同時に喜久雄は、母として愛情を注がずにいられない何かをもっていると感じた。