朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第190回2017/7/14

 この小説の登場人物の中で、一番好きだった幸子のことが心配だ。
 幸子は、気っぷのいい女将さんで、出会った初めから喜久雄と徳次を受け入れ、その後も面倒をみてきた。
 幸子の口から出た言葉で、好きなものがいくつかある。
①出会ったばかりの喜久雄と俊介が喧嘩をしそうになった時の言葉。
「あー、邪魔くさい。どうせ、アンタら、すぐに仲良うなるんやさかい。いらんわ、そんな段取り。でもまあ、しゃーない。喧嘩するんやったら、今日明日でさっさと終わらしといて」(67回)
②喜久雄の子を生む市駒の世話をしている時の言葉。
「男なんてどいつもこいつも甲斐性なしで意気地なしのアホばっかりや。でもな、生まれてくる子にはなんの罪もないねん」(160回)

 
気丈だった幸子にとっても、襲名披露の舞台での白虎の急病は、あまりにも重い厄難なのであろう。怪しげな新宗教を信じて、おかしなことにならないか、心配だ。