朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第196回2017/2/21

 経理担当者が来たということは、金銭のトラブルか?喜久雄の周囲で金銭のトラブルというと、幸子の信仰を連想するが‥‥

 喜久雄は、地方の少ない観客の前でも手を抜くことなく演じている。しかし、監督や演出家の存在しない歌舞伎俳優の世界では、先輩の名優の舞台を間近で観て、直接習うことがなければ、芸は磨かれないであろう。
 その辺りの実情は、同じ紙面の「語る 人生の贈りもの 歌舞伎俳優 中村 吉右衛門」に如実に示されている。