朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第200回2017/7/27

 いつも崖っぷちにに立つ喜久雄だが、ここにきて今までと違うと思う。天涯孤独、何も失うもののない喜久雄だった。それが、今は、失うものがないどころか、とんでもない大荷物を背負っている。
 三代目花井半二郎という大看板、憶を超す借金、そして綾乃というなんともかわいい娘、もちろん幸子とマツは喜久雄だけが頼りに違いない。お勢さんや源さんも喜久雄が不甲斐なければ散り散りになるしかないであろう。
 誰かのために働くことをしたことのない喜久雄は、どんな行動を取るのか。