朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第205回2017/7/30 

 そうか、これだけの扱いをされても、喜久雄は不平不満を漏らさない。が、自分の惨めな姿は徳次にさえ見せたくないと思うのが、喜久雄なのだ。
 その喜久雄の本心を知りながら、言葉には出さない徳次だった。主従関係というより親友の関係だと感じる。久しぶりに、「友情」という言葉を連想した。

 
 この喜久雄のファンや贔屓(ひいき)に対する照れからの無愛想、いくら白虎や幸子から咎(とが)められても、生来のものでどうにもならないのでございます。(185回)

 語り手がこう語っていただけに、喜久雄の辛さが伝わってくる。