朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第208回2017/8/2

 痛快だ。
 
「(略)鶴若にしろ、さっきの社長にしろ、我慢できんのやったら、俺がいつでもどついたるし、殺したるわ。(略)」

 
徳次のこの言葉が、実行されても何かが解決することはない。だが、徳次のこの思いは、なんとも痛快だ。
 徳次が口先だけで言っているのではないことは、今までの徳次の人生を振り返れば分かることだ。
 喜久雄については、彼の人柄の根っこにあるものが次々に描かれている。
 徳次については、まだまだその人間性が見えてきていない。徳次が一貫してもっているのは、喜久雄を守ろうとする心根だ。そのほかは、何があるのだろう?
 徳次が本当にやりたいことは、何なのか?徳次には好きな女はいないのか?



 208回を一度読んだときは気づかなかった。読み返してみて、次の文は、今後重要になると思った。

 歪(ゆが)んだ丹波屋の家紋が、なぜか白虎の顔に重なり、なぜか俊介の顔に重なり、思わず立ち上がった喜久雄、(略)