朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第231回2017/8/25

 俊介の再登場が、直截に書かれた。

 竹野は、俊介の素顔を知っている。それを、ダメ押しする「俊ちゃん」の声。
 化け猫の正体が俊介であったことは、伏線に調和する。物語の伏線に調和しないのは、次の表現だ。

竹野の体にブルブルッと武者震いが起こったのはそのときで、たった今、自分がここで見つけたものが、とてつもないものであることを肌で感じたのでございます。

 これはテレビの素人番組に出すような下等なもんじゃない。

 
私は、竹野を今までの歌舞伎を変える興行主、プロデューサーになっていくであろう、と予想していた。そして、竹野は喜久雄を革新的な歌舞伎の主役として育て上げていくだろう、と思わせられていた。
 竹野が、眼をつけたのは、喜久雄、三代目半二郎ではなかった。