朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第244回2017/9/7

その一
 見事な変わりようだなあ。

(略)こちらは明らかに別の女、自分の知らない匂い立つような色気の女(略)

 しかも、その色気が母親としてのものだと描かれている。
 春江は、登場の度に、別の女として現れる。公園の暗がりに立つ少女。喜久雄に寄り添い、刺青の痛みに耐える少女。喜久雄を追って出て来た都会に戸惑う少女。大阪のスナックで故郷の料理を出し、スナックを繁盛させる女。大阪のバーで、人気者となった女。俊介と一緒に行方をくらました女。
 だが、今回の変化が一番大きい。それだけの出来事があったのであろう。

その二

「立派な名前や。……立派なお山さんの名前や」

 喜久雄は、俊介と春江の子を見たとたんに、この子一豊が丹波屋の跡取りだと直感したのだと思う。209回感想231回感想その2から類推した。