朝日新聞夕刊連載小説・津村記久子作・内巻敦子画『ディス・イズ・ザ・ディ 最終節に向かう22人』第30回2017/8/4 第6話 龍宮の友達③

あらすじ
 
高校に行かなくなっている娘の日芙美が、睦美に自分から話し始めた。日芙美は、もう高校へ行きたくないことと、予備校なら行けるかもしれないと、静かに話す。日芙美は、高校では同い年のたくさんの人と理由もなくいて、その人たちの意向をくみながら行動するのが、どうしても耐えられない、と言う。さらに、日芙美は母の睦美に、離婚してもいいよ、と言った。
 睦美は、娘の言いたいことがわからないでもないと思い、離婚のことにも、「わかった、考えとく」と答えた。

 白馬FCのホームスタジアムの最終節の対戦相手は、熱海龍宮クラブだ。この試合に、睦美は細田さんを誘って一緒に行くことになる。熱海龍宮クラブは、細田さんの亡くなった旦那さんが応援していたらしいチームだ。睦美は、細田さんをメインスタンドのアウェイ寄りの指定席へ案内する。席の隣の初老の男性は、龍宮クラブ側の人で、すでに酔っぱらっている。睦美が、お茶を買いに席を外して、戻ると、この見知らぬ男性が細田さんに話しかけている。

感想
 娘の日芙美の感じ方が分かるような気がする。今の日本では、学校は子どもたちにとって楽しいものでも必要なものでもなくなった。勉強をしたいなら、学校でなくてもできるようになった。
 これは、もう動かしようのない現実だ。
 では、親はどうすればよいか。睦美のように対処するのがよいと思う。まだまだ、学校以外の勉強の場は特殊な選択肢になる。だから、先ずは一般的な学校へ進学することを用意してやるよりないだろう。そして、子どもがその学校に拒否反応を示したら、次の方法を一緒に考えてやるのがよいと思う。

 今回の第6話は、今までと少し様子が違う。サッカー観戦によって、登場人物が悩みを解消するという展開ではないように思う。
 娘の日芙美は、自分で自分の気持ちを整理して、母に話している。母の睦美も、娘に期待をかけ過ぎていたことに自分から気づいている。サッカーについての話題は、この母と娘の気持ちの通じ合いを滑らかにしているだけだ。
 細田さんの旦那さんが、妻に隠していた行動はサッカー応援らしい。だが、細田さんが感じている亡き夫への疑いが、このサッカー観戦だけで解消するとは思えない。