朝日新聞夕刊連載小説・津村記久子作・内巻敦子画『ディス・イズ・ザ・ディ 最終節に向かう22人』第31回2017/8/18 第6話 龍宮の友達④

あらすじ
 隣の席に座り合わせた男性は、細田さんに次のようなことを話した。去年までは、時々一緒に試合を見るおじさんがいて、そのおじさんは、奥さんには、サッカーの試合を観に行っていることを知られるのはなんとなく照れくさい、と言っていた。
 その話を聞いた細田さんは、亡くなった旦那さんの写真をその男性に見せた。男性が話していたおじさんは、その写真の主、細田さんの旦那さんその人だった。
 驚いた初老の男性は、さらに言う。来年は嫁さんを連れてきて、俺に紹介するって言っていたなあ、と。
 最終節の試合で、白馬は負けた。だが、睦美が応援する新垣は得点し、白馬FCは二部に上がってから最高の順位でシーズンを終えた。試合後、白馬の選手たちにゲートフラッグを掲げながら睦美は、家族のことを思い出し、もういい、と思った。

感想
 長年連れ添い、亡くなった夫に対する疑いが、偶然の出来事によって解けた。なんとなく、ホッとさせられる。そして、夫婦の間がうまくいっていてもこういうことはあるのだろうと思わせられる。
 睦美の夫の不倫について、何も解決してはいない。娘の日芙美の不登校はむしろ決定的になった。でも、睦美はそのことに囚われ続ける状態を抜け出したのだろう。
 夫の不倫が決定的になれば、離婚もあるだろう。日芙美は、高校とは別の道を見つけるだろう。そして、睦美は自分の道を進む気持ちになったと思う。

 悩んでばかりいても、しかたがない。熱中できることを見つけ、体を動かし大声でも上げる方がいい。