朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第260回2017/9/24

 この番組を見たら、私は、喜久雄を悪人と思う。そして、理由もなく嫌い、これからも怪しげなことをする役者だと信じるだろう。
 たとえ、喜久雄の襲名の経緯(いきさつ)や俊介が姿をくらましたことを知っていたとしても、そんなことは、十年前のゴシップに過ぎないのだから。今のゴシップのインパクトに適(かな)うはずがない。