竹野は、ある程度、俊介と喜久雄の今までの事実を知っているはずだ。だが、それには目をつぶり、喜久雄を、丹波屋を乗っ取った悪役に、俊介を、身を隠して芸を磨いていた丹波屋の正統の後継者に仕立てようとしている。
 では、竹野は悪意の興行師、テレビマンか?そんなことはない。俊介の化け猫の芸を発見したのは、竹野だ。たとえ、化け猫の芸で、歌舞伎の舞台に俊介が復帰しても、竹野の策略がなければ、俊介は歌舞伎愛好家の中で、注目されるだけで終わったであろう。
 それどこか、竹野の悪意の筋書きは、喜久雄にも世間の注目を集めることになると思う。
 竹野は、俊介と喜久雄の救い主になる可能性を感じる。