国宝 あらすじ 226~250回 第十章 怪猫

 三友本社から出向して、大阪のテレビ局にいる竹野は、同僚に教えられて、山陰の温泉街の見世物小屋の芝居を見に行く。そのわびしい舞台の化け猫の演技に、竹野は釘付けになる。
 化け猫を演じた役者の楽屋を訪れた竹野が、目にしたのは出奔していた俊介の姿だった。

 東京で体調を崩し、舞台に立てなくなっていた喜久雄は、京都の市駒と娘綾乃の所で暮らし始める。娘と遊ぶ時間を過ごした喜久雄は、頭も体も若返ったように感じる。喜久雄は、徳次と市駒に東京の歌舞伎の舞台に戻る決心ができたことを言う。

 竹野は、俊介の歌舞伎の舞台復活をテレビで特集するという企画を立てる。その企画のために、小野川万菊の力を借りようと、万菊を、例の温泉街の見世物小屋へ連れて行く。
 見世物小屋で、化け猫を演じる俊介の芸を見ながら万菊は、観客席で舞台上の俊介と共演しているような所作をする。

 東京に戻った喜久雄に、俊介が発見されたと知らせが入る。喜久雄と再会した俊介は、自分のいなかった間の詫びを言うが、どこか冷たさを感じさせる。その俊介が、出奔している間に子ができたと告げた。俊介との短い再会を果たした喜久雄は、春江がいるという帝国ホテルへ向かう。そこには、母となった春江と、春江と俊介の子一豊の姿があった。

 俊介の復帰の舞台が決まる。俊介は、明治座で、万菊と共演することになっている。喜久雄の方は、以前よりはいい役が付くようにはなっているが、主役級の役は付かない。
 万菊との稽古に励む俊介を目の当たりにした喜久雄は、「ここから這い上がれよ」と自身に叫ぶ。そんな悔しさを噛み締めている喜久雄のもとに、吾妻千五郎の次女彰子が現れる。