朝日新聞夕刊連載小説・津村記久子作・内巻敦子画『ディス・イズ・ザ・ディ 最終節に向かう22人』第32回2017/9/1 第7話 権現様の弟、旅に出る②

あらすじ
 壮介は、久しぶりに神楽を舞うことに自信もなければ、気も進まない。しかし、神楽のリーダーで幼なじみの司朗に説得されて、猛練習し、姫路のスタジアムで無事に舞い終える。姫路FCのファンがどれほどイベントの神楽を観に来るのかと疑問だったが、意外にたくさんの人が真剣に壮介たちの舞を見てくれる。
 イベントの出演が終わり、壮介たちは着替えて、姫路FCと遠野FCの試合を観始める。遠野FCは前半で二点リードされる。司朗も壮介も地元チームの遠野FCに興味はなかったのに、後半が始まると、司朗が、神楽の権現様のかしらが入っている木箱にさわって、お願いしますよ、と言った。

感想
 
若い人々が去って行く方が多い地元へわざわざ戻るというと、何か気負った感じの人を想像する。また、後継者不足の伝統芸能を受け継ぐとなると、これも、そこに意義を見出して、頑張っている人を想像する。
 しかし、壮介には、そんな感じがない。久しぶりに神楽の権現舞を再開したのも、仕方なく引き受けている。だが、やり終えた後の爽快感はあるようだ。
 仕事で故郷の地方支社に残り続けるのも、地元の伝統を継承するにも、やり始めたら長く続けるのが難しいと感じる。一時的に盛り上がることも必要だろうが、そこには一時的なものしかないだろう。