朝に読んで、展開の意外さにびっくりした。同時に、喜久雄の策略をすんなりとは受け入れられなかった。

 策略で女を抱いたのも、喜久雄にとっては生まれて初めてのことでございます。

 それもこれも吾妻千五郎からの後ろ盾ほしさ。愛してはいない。しかし歌舞伎のためならば、彰子を愛せる。


 再読して、文章表現の細部が気になりだした。喜久雄の行為は、策略なのか愛なのか?少なくとも、金のためや自分の人気のためでないことは確かだ。
 喜久雄にとっての「歌舞伎のため」の底知れぬ深さを感じる。それは、俊介にとっても同じなのであろうか。