朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第276回2017/10/11

 円満で安定した歌舞伎役者の家の場面だ。だが、そうとばかりもいっていられない。なぜなら、今は父となった俊介の小学生時代も、きっと、この時と同じようであっただろうから。
 一豊は、多くの人から可愛がられ、同年代の子には想像もできないほどの拍手を浴びる。だが、歌舞伎役者の子は、歌舞伎役者への厳しい道から外れることは許されないのだ。あっさり、諦めているかにみえる遠足にしても、自分以外の皆は行けるのにと思うとやり切れないに違いない。
 
 次回への期待が嫌が上も増す。「遠慮がちな男」は、誰か?
 前の章に一瞬登場した松野(269回)なる男か?だとすると、この男は、俊介や春江とどんな関係か?それとも喜久雄か?喜久雄だとすると、よほどの変わりようだ。彰子と喜久雄はどうなったのか?