朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第277回2017/10/12

 お勢は、「しょぼくれたお爺ちゃん」言っていた。
 春江は、苛立ちを隠さなかった。竹野は心配そうにしていた。
 
 人は見かけで判断すべきではないのでしょうが、これまで幸子が生きてきた世界では接点のなかったタイプの老人でございます。(269回)

 たとえ、旅回りの一座にいた者でも芸人なら接点はある。また、辻村のようなタイプの人とも接点はある。幸子と接点のなかったタイプの男、謎だ。

 今回でも、松野はいかにも貧相な外見ながら、いつもニコニコしている老人と描かれている。そして、俊介はそれとなくこの老人に気を遣っている。
 これだけ念入りにみすぼらしい様子の老人と書かれると、かえって、松野に外見とは真逆の本性や過去を疑ってしまう。