朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第278回2017/10/13

その一
 俊介と喜久雄は、その芸の土台となる稽古は共通であった。なんと言っても、二人の師匠は二代目半二郎であった。
 俊介が万菊に、喜久雄が歌舞伎以外の場で、それぞれ新しいものを身に付けたとしても、二人の芸の土台は同じだろうと思う。

その二
 端役にしかつけなかったが、喜久雄の芸に、万菊も鶴若も得体の知れないものを感じていたように思う。
 梅木社長は、他の歌舞伎役者にはない魅力を喜久雄が持っていることに気づいていた。鶴若も、それを感じ、喜久雄がその魅力を増すことに、怖れさえ感じていたのではないか。(182回) 182回感想
 そして、喜久雄自身も、自分の魅力に気づいていなかったと思う。