朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第280回2017/10/15

 徳次が今までとは違う何かをやるという予兆は見えていた。第十章「怪猫」の前半辺りから、徳次の動きが今までは違っていた。234回感想 しかし、喜久雄を殴り、叱りつけるとは!

 彰子の登場は、この女が重要な役割を持つことを予想させた。(250回)しかし、その彰子が喜久雄の世話をやり通すとは!
 歌舞伎役者には、役者を支える女房の存在が不可欠なことと、市駒は役者の女房にはならない233回感想ことに、気づいていた。だが、それを、女子大生でお嬢さん育ちのように描かれていた彰子がやるとは、いひょうを突く筋立てだ。


 (略)本来の喜久雄が持つ主役としてのカリスマが溢(あふ)れ出した(略)

 これが、喜久雄の魅力なのだ。そして、この喜久雄本来の「カリスマ」は、大御所の歌舞伎役者と俊介にとっては、脅威なのではないか。