朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第278回2017/10/20

 弁天は、度々登場するが、登場人物としては重要ではないと思う。狂言回しとして、筋の運びをする役柄だ。弁天が登場した最初は、春江に声をかけた場面だった。そうなると、今回の登場は、春江の物語が始まることを期待してしまう。

 私の予想274回感想その2はほとんど外れたが、特に春江と彰子については大外れだった。それほど、凡人の読者にとっては意外な展開だった。
 春江の今までは、この小説の登場人物中で最も波乱に満ちているといえる。長崎の街娼、大阪のクラブの売れっ子、俊介と失踪、復活した俊介を支える梨園の女将、これだけでもその浮き沈みは、主人公喜久雄を上回る。さらに、喜久雄から俊介へと「旦那」を変え、今や丹波屋の跡取り一豊の母だ。
 何が、春江にこのような生き方をさせているのだろう?