朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第291回2017/10/26

 古書店なら働くといっても、忙しいことはあるまい。店番でもしながら芸能に関する書籍を、俊介は読み漁ったか。それとも、芸能専門書のしかも古書店となると、その方面に相当詳しい人が出入りするはずなので、古典芸能を知り尽くしている人物に、俊介は出会ったか。
 
 一方、春江の方は予想通り、俊介を養っていた。喜久雄も父が死んでからは、春江のヒモのようなことをしていた。
 今評判の歌舞伎の半弥と新派の半二郎、その二人がそれぞれ短い間とはいえ、春江のヒモだったことになる。