国宝 あらすじ 276~300回 第十二章 反魂香

 小学生の一豊は、父俊介と共に舞台に立つようになっている。
 松野は新生丹波屋に居ついてしまっている。

 喜久雄が彰子の愛情を利用して、吾妻千五郎に取り入ろうとして、千五郎の逆鱗に触れてから四年ほどが経っている。喜久雄は彰子を伴い、何度となく千五郎に詫びに赴くが、全く取り合ってもらえない。丹波屋に俊介が戻り、吾妻千五郎に見切られて、喜久雄は役者廃業かというところまで追いつめられる。
 だが、彰子の母の遠縁にあたる新派の大看板、曽根松子が喜久雄に救いの手を差し伸べる。
 気が進まぬまま新派の舞台『遊女夕霧』に立った喜久雄だが、長い年月の鬱憤を晴らすような舞台で、評判を呼ぶ。さらに、彰子は体裁も気にせず、喜久雄の世話をやり通す。
 そのころ、徳次は、喜久雄に彰子の愛情を利用しようとしたと打ち明けられる。それを聞いた徳次は、そんな気持ちなら役者なんかやめてしまえ、と喜久雄を殴りつける。徳次に殴られた喜久雄は、彰子に全てを打ち明ける。彰子は、「中途半端なことしないでよ!騙すんだったら、最後の最後まで騙してよ!」と叫ぶ。

 見事に歌舞伎の舞台に復帰した俊介と、新派で次々と主役をやる喜久雄の二人は、同時期にすぐ近くの劇場で、同じ役「鷺姫」を演じることになる。

 すっかり丹波屋の女将になっている春江は、久しぶりに弁天と会う。弁天は、今やテレビで人気の芸人となっている。春江は、自分が大阪のオンボロアパートにいた頃の若き喜久雄と俊介のことを懐かしく思い出す。

※弁天との会話から、俊介と春江が身を隠していた時期の回想の場面になる。

 大阪を逃げ出した俊介と春江が落ち着いたのは名古屋だった。名古屋で、俊介は日雇いの仕事をするが長続きせず、春江が働きに出ることになった。ぼんぼん育ちの俊介は、たちまち春江のヒモのような生活になる。
 そんな俊介に、借りていた安アパートの大家が声をかけ、俊介は古書店で働くことになる。その古書店は、歌舞伎、文楽などの芸能専門店だった。俊介は、この店にある本を読み漁る。
 大阪を離れて一年近くになるころに春江が身ごもり、男の子を生む。俊介は喜び、豊生と名付ける。 
 俊介は、生まれた子を連れて、大阪の実家に戻る決心をする。俊介は、家に戻る前に、まず父に許してもらおうと、父が出ている劇場を、春江と豊生と一緒に訪れる。
 父、二代目半二郎は、俊介と豊生を見て、「今になって、なんの用や?」と言う。そして、俊介だけを連れて、料亭に行く。その料亭で、父は、俊介に実家に戻れるかどうかの試験だと言い、『本朝廿四考』の八重垣姫を舞わせる。踊り終えた俊介に、父は、「もう一年だけ待ってやる。それでダメなら、半二郎の名を喜久雄に継がせる」と言う。
 父、二代目半二郎に丹波屋に戻ることを許されなかった俊介は、春江、豊生を連れて、いったん名古屋に戻る。名古屋では、俊介の歌舞伎研究はさらに熱を帯びる。
 春江が仕事に出ているある夜、俊介は豊生が高熱をだしているのに、気づく。慌てて、救急車を呼ぼうとするが、電話が故障している。豊生を抱いて、必死に診療所に行くが誰もいない。豊生を抱きしめたまま総合病院に駆け込んだ時には、すでに豊生の命はなかった。

※回想から、俊介と喜久雄が、同月に同役でそれぞれの舞台に立っている場面へと戻る。

 家に戻った俊介が、春江に、『本朝廿四考』の八重垣姫で芸術選奨を受賞したと告げる。その芸術選奨を、喜久雄も同時に受賞していた。
 俊介と喜久雄は、歌舞伎と新派で同じように評価された。