朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第311回2017/11/16

 徳次と喜久雄には、実の親も兄弟もいない。だが、喜久雄にはマツがいるし、今は、市駒と、彰子、それに、娘の綾乃がいる。
 育ての親さえいなかった徳次には女房もいない。その徳次にとって、喜久雄は坊ちゃんであると同時に弟であろう。そうなると、市駒、彰子は義理の妹となるし、綾乃は姪っ子になる。
 徳次は、妹に懇願されて、姪っ子を救いに向かった。しかも、向かう場所と相手にする人間は、徳次が昔よく知っていた場であり人である。
 徳次は、その力を発揮するに違いない。