朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第316回2017/11/21 

 辻村は、企みを抱き、権五郎の新年会に向かった。さらしの下には、ドスではなく入念に包んだワルサーを隠し持っていただろう。そして、連れて行くのは、二代目半二郎だ。
 辻村は、首尾よく企みを遂げた。唯一の誤算は、権五郎をワルサーで撃つ現場を、二代目半二郎に見られたことだったろう。だが、その後始末にもぬかりはなかった。あらすじ 第一章

 その後の辻村は、暴力と騙し合いと裏切りの極道の世界を生き抜き、今やその頂点に立つ一人となっている。そして、その力を誇示するために招いたのが、三代目半二郎、喜久雄であった。
 喜久雄は、辻村と権五郎と二代目半二郎との因縁を知る由もない。

 頂点に立つ者は、常にその地位をねらわれると思う。