朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第322回2017/11/27

 長崎で、喜久雄と春江がどうやって出会い、どうして離れられなくなったのか、ずうっと謎だった。以前に、次のような予想をしたことさえあった。

76回感想
 喜久雄は、組の年上の者から童貞であることをからかわれ、徳次に相談した。徳次は、手っ取り早いのは、買うことだと教え、公園に行けば若い娘を買えると言った。そこで、喜久雄は深夜公園に出かけ、春江に会った。喜久雄は、一度会っただけで、春江を好きになり、春江も同様だった。喜久雄は、さすがに、売春をしている少女を好きになったとは親には言えず、春江に大金をやることはできなかった。
 春江の母には、多額の借金があり、金がどうしても必要だった。春江と喜久雄は、出会いこそ特殊であったが、互いに好きになり、離れられなくなったのは十五の少年と少女の純粋な気持ちだった。
 いずれ、明かされるであろう二人の出会いと恋はどんなものであろうか。


 その謎が明らかになるかもしれない。

そう言い切る春江の目の奥に喜久雄は出会ったころの彼女を見たのでございます。

 十五歳の春江は、薬に苦しむ身内を抱えていたか、あるいは、それに等しい苦しみを抱えた人のために体を売っていたということが考えられる。